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2010年10月23日(土)

 四人で家に向かっている。小川に沿って歩く。まわりは緑の田んぼだ。畦道を行くのは私たちの他はほとんど自転車に乗った高校生で、坂でもないのによくそんなスピードがでるなあと思う。小川に茂る深緑やうぐいすいろの藻の中には小エビがいる。透明な小エビだ。小エビを見ると、夜空に目が慣れて星がうわっと見えるようになるのと同じ要領で、他の魚たちも見え出す。アユやアマゴなどおいしそうな魚がいる。コリドラスとかエンゼルフィッシュ、ディスカスもいる。これはすごいね、とはしゃぐ。魚たちは吹奏楽の声で歌っている。
 (これは夢だとわかっていて、一緒にいるのが家族でないのがよけい寂しい。)


2010年10月25日(月)

 部室に行くためには長い階段をくだらなくてはならない。コンクリートの、段差の小さい階段には、薄く土が積もっている。いろんな種類の草花がにょきにょきしていて、近くに木はないっていうのに落ち葉がかさかさいう。一段降りるごとに私の白い運動靴にてんとう虫がくっつく。てんとう虫を払いのけながら降りていく。隣では友だちがぺちぺちと蚊をつぶしている。てんとう虫が靴でなくくるぶしにくっつき出したので、踏む心配はなくなったと安心していたけど、彼ら集合して大きく固い蛾になるので恐い。指でそっとつつくと遠い自転車置き場に飛んでいく蛾。蛾は羽ばたくたびに大きくなる。自転車置き場にいる子どもたちは、子どもくらいの大きさの蛾に驚いて逃げる。私たちは階段を降りきって、硝子に囲まれた部室に入る。
 音楽がきこえると思ってたけど、しかしみんなうつむいて泣いていて、先生のカメラを壊してしまったためらしい。


2010年10月26日(火)

 洗剤を薄めた水に紙を浸し、洗濯バサミで吊るして乾かす。ドライヤーがあればすぐにでも紙飛行機つくったけど、ないから進まなくちゃいけない。吊り橋を渡ったさきの島には大きな団地がある。後ろでは轟々とすごい音がしていて、紙飛行機が一機二機と飛んでいく。


2010年10月27日(水)

 死んだ人たちが到着したよ。
 後輩たちが二人一組になって赤いのと紫のが入った花束を抱えお迎えの準備。私たちは教育係なので、声を荒げてそれは違う、とか、そう正しいね、とか言っていく。花束の花たちは一番上の花びら部分だけ使われる。それらは階段の一番上とかに積まれるのです。余った部分は捨てられる。
 別の後輩たちは銀色の如雨露を持って集合。如雨露の中には花をすりつぶした色水がなみなみと入っている。木々の茂る大通りに出て、回りながら水を撒く。私たちはまた、OK、とか、なんでそこに撒くの、とか言っていく。赤紫に滲んで境目のなくなった木々と空がきれいで写真を撮る。でも携帯のカメラはこの奇麗な景色を虫だと判定して、画面には赤く光る金色のカナブンの顔がでーんと写ってしまう。いいカメラ買いなよと先輩が言う。


2010年10月28日(木)

 友だち何人かと電車に乗っている。すかすかの電車内。背の高い添乗員がやって来て、一個とばしに窓を開けていく。トンネルのときの音がすごい。森に入るとざーっと何かなだれ込んできて、友だちが蝉だと叫んでそれは蝉になったけど、添乗員が葉よと言えばそれは葉だった。


2010年10月30日(土)

 雨が降ってる夕暮れだった。コンクリートの道路には水がたくさん広がっていて赤くきらきらしている。歩いているうちにあたりは薄い黒色になって地面も銀か灰色に光る。みんな透明のレインコートで無言、列になって歩く。真っ暗になる前に火をとってきてと先輩が言う。道の脇に広がる森のなかには燃えるものがいくつかあって、ほたるみたいにぼんやり明滅している。私たちは数人ずつにわかれ、手をつないだりして森に入る。地面は柔らかくて少し生臭い。木の枝に灯る火を見つけて、どう取れば良いんでしょうと先輩に訊ねる。簡単だよと先輩が火にふっと息を吹きかける。火が消えたと思ったら、そこには光るモンシロチョウがいる。先輩はそっと両手で蝶をとらえてそのまま道へと戻る。戻ってきたみんなは一様に、優しく重ねた両手を薄く光らせている。手を開いて蝶の羽根をちぎると、それは再び火に変わる。


2010年10月31日(日)

 船はどんどん高度を下げて海面に近づいていく。
 窓の外、したのほうを見てみると、田下駄を履いて浅海を行くおじさんの横に大きな魚がいて恐い。サメかと思う。あれはクジラだと言われてホッとする。おじさんは食べられたりしないんだね。
 さて、船旅ももう終わりだ。船内で買ったCDを丁寧に鞄にしまって、姉と母と一緒に降り口に向かう。降り口の近くのステージではクイズ大会をしている。ルフィは24歳で旅を終えることを誓っていたがその後ゴムの体を手放すかどうかという問題の最中で、いろんなひとが最終回予測をしていくのが楽しかった。降り口の、ふわふわした床の上に立つと、ゆっくり沈んで足下に海。
 三人で海の上に降り立つ。黒いよく浮くもので作られた道があって、その上に降りたんです。船からの落下はゆっくりで恐くなかった。道はだいぶ幅があったけれど周りの海の青さは深く、はみ出したときのことを思うとなかなか足が動かなかった。姉と母は先へ先へと行ってしまう。二人がペンギンを見て立ち止まっているときにやっと追いつく。他にもたくさんの生き物がいた。
 そうだ海は青というより緑だった。海上に浮く道はときどき水に浅く浸っていて、ジーパンが緑に染まってしまう。でもそれが三人おそろいだから嬉しかった。