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2010年09月08日(水)

 アニメーションをつくることになって他の美術サークルとの合同合宿。ひとりひと作品でもいいし、班になって作ってもいい。私はひとりでつくろうと思う。丸まって眠る他サークル員を踏まないように注意しながら合宿所を出て、カメラで商店街を撮影していく。私のアニメーションの背景は実写になる予定なんだ。商店街は低彩度で落ち込んだ雰囲気がある。コントラバスを弾いている人がいたから撮る。コントラバスの人は短調の曲をひとつ弾き終えると楽器をケースにしまって歩き出した。追う。
 カメラの液晶越しに商店街はビビット。
 商店街を抜けると一面民家でひとつだけ大きい建物が目立つ。昔住んでたマンションだ。壁の灰色に虹がキラキラ映っている。もはや全部、カメラの液晶越しにしか見ていない。コントラバスの人は楽器を背負って螺旋階段を上っていく。追う。三階まで来てここは昔に住んでいた階。コントラバスは弾かれ始める。弾いているのは私だ。見下ろすと踊り場に髪の長い女の子がいてこっちを見ている。自分の手を見てって私は言う。女の子は言う通りにする。彼女の手はしわしわとなっていって縮む縮む。最終的に赤いビー玉になってしまう女の子だった。私は楽器を置いて昔住んでた部屋に入り、さっきまで見ていた物語を、描きだす。


2010年09月09日(木)

 東京とふるさとの交わる地点として大きな本屋がある。そこを通ってふるさとに行ったりはできないし、ふるさとの人びとが東京に来ることもできないけど、そこで会うことはできる。ときどきその店に行って、偶然にふるさとの友だちと会うのが好きだ。今日もひとり見つけた。文房具売り場で見つけた。吹奏楽部の低音仲間だ。ようって声かけると相手は驚いて私の顔をまじまじと見る。まみちゃんって訊かれて、違うよ忘れたのかよって悲しく思う。ちょうど双子の姉も東京へ来ていて本屋にも一緒に入っていた。二人一緒だと思い出すだろうと姉を呼ぶ。姉と二人並んで友だちの前に立つけど友だちは私たちを思い出せない。ざわざわとして考える、時間が経ったからか、変わったからか。違う、友だちはそんなことで私をわかんなくなったりするひとじゃない、と思うと、とたんに全部に暖色が染みて、全部嘘だったんだって。


2010年09月11日(土)

 部室でゲームしてる。塊魂かと思ったら違っていて画面はやたら暗いしなにもくっついてこないし動かせる丸いのはどんどん削られてすぐ死んでしまう。みんなでわーわー死ぬー殺さないでーとか叫びながら丸いのを進めて行って、宝箱を開いたら校舎への入り口が開く。
 校舎は文化祭の準備であわただしい雰囲気。窓枠は木で、そこにはまっている薄い硝子は少しずつ歪んでいる、壁はムラのある白色、廊下は所々変色したみどり色で、懐かしい。呼ばれたので教室のひとつに入る。壁一面に絵を飾っている。手紙の束を手渡されて、各教室に配ってきてと言われる。そこでゆったりと流れていた校内放送だったけど、何を言っているのかはわからなかった。でも子どもたちはわかっている。一斉にろうかに出てろうかの窓から外に顔を突き出して上級生が窓をどんどん閉めていくので首が! と思ったけど首が小さい子どもに変わって体はうまいこと溶けて消えて、小さい子どもたちは飛んで校門に向かう。
 子どもたちを見送って、全部窓の閉まった暗い校舎に手紙を配って歩く。


2010年09月13日(月)

 先輩と一緒に小さなホールにいて人形や道具、壁の配置、配色を決めている。人形はどれも木でできていて、頭はつるんろしており、ふわふわした白いドレスを着ている。誰かが見る夢の景色だって言う。音は入らないからラジオを聞きつつ床に色を塗ったり草を生やしたりする。ラジオでは伊予三島のことを言っていて、妖精の産地だと紹介している。妖精っていうのは夢に使う人形のこと。私たちがいま配置を決めているこれらのことだ。私は三島がそうだって知らなかったから、とても驚いて、でも嬉しかった。思いついたのでホールに煙突を建てていく。勝手なことをするなと先輩に怒られて落ち込む。


2010年09月19日(日)

 電話がかかってきて絵を片付けないといけない。部室にあるやつも全部。友だちと一緒に薄暗い学校に忍び込んで自分のカンバスを二つずつとり慌てて階段を駆け下りる。降りた先には船が待っていて乗り込む。船主のおばさんの子どもらは鳥の衣装を着ていて、なんのための飾りなんですかその羽根はと私は訊く。おばさんは教えてくれる、税金対策だそうだ。