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2010年11月24日(水)

 白い階段を神様たちがのぼっていく。神様の色はだいたいくすんだピンクか紫だ。私たちは離れたところからそれを見ていて、神様の名前募集の紙に、思いついた名前を書き込んでいる。


2010年11月25日(木)

 歌会を開いて司会をしている。「じゃあ次の歌にうつっても、大丈夫か」と言うとみんな「大丈夫だ、問題ない」と嬉しそうに言ってくれる。でも机の下のゴミ箱にたくさんひよこが捨てられていて、みんなその分配に必死になっている。全然大丈夫じゃないじゃない。


2010年11月26日(金)

 村は山奥にある。長い駅と、それに接した7つの白い建物が緑の中に取り残されている。でも電車には自動車ごと乗れる車両があって、人の往き来は盛んです。
 私たちは白い建物に住んでいる。立方体を二つ重ねてその上にぺしゃんとした四角錐をのせた形の二階建ての建物。私たちが住んでいるのは、駅のある側に立って見て、向かって右から三番目の建物の、二階。下には元教師だという老夫婦が暮らしている。定期的に夫婦に挨拶に行くけど、ふたりはたいへんあがり症で、子どもの私たちに対して、怖い上司を前にしたときみたいにいつも緊張している。
 二階に行くには外付けの螺旋階段を使う。
 その日階段には灰色の蝶が落ちていた。六本のあしで白い球体を抱いている。球は蝶のからだほどの直径があって、卵だから、蝶にとってはそれなりの重さもあろう、蝶はもう動けないようだった。傷つけないようにそっと端に寄せる。でもそのたび電車が通過して、それで起こる風は蝶を階段の真ん中に戻してしまう。何回も繰り返して、私の指は繊細でいることに疲れ、とうとう蝶の卵を爪で鋭く裂いてしまう。
 果たして中は空洞で、白い球体はしゅっとしぼんだ。蝶は身を起こしてしなびたその殻を食べ始めた。
 なんだこれでよかったのかと安心する。殻を食い終えた蝶は大きなネズミになって森に去る。


2010年11月27日(土)

 細い道をみんなの先頭になって駆ける。右の壁はまったく灰色だけれど、楽団のポスターが等間隔に貼られているから華やかだ。左の壁はガラス。その向こうでは楽団が演奏やダンスの練習をしている。景色のすべてがきらきらしている。色と光が過剰で、それなのにやさしい。カラフルな飴みたいだ。やわらかい飴ならなお良い。駆けていく。


2010年11月28日(日)

 どうしたって「眠」の字が書けない。「町」の「田」の部分の一番上の横線がないものを書いてしまう。だから壁に字を書くのは後輩たちに任せる。真四角の机を並べて白いテーブルクロスをかけていく。一つの机を12人で囲む。一辺に3人。
 みんなエレベーターでやってくる。みんな頭の先から徐々に登場する。一つの机に12人が集まれたら机ごとに解散で、私たちは海に行こう。のぼりエレベーターを慌てて駆け下りて車に乗り込む。車内では隣の人と手をつないでなければらなない。太い木々の間をくねくね曲がりながら進む黒い車。