2010年12月22日(水) 1
雨は強くなるばかりでおもての道路はもう川みたいになっている。濁流に流された老人たちが電信柱を伝って私のベランダにやって来るので、私は傘でベランダを防衛している。とても寒い。老人を傘でつつくと罪悪感が喉を痛くさせるけれど、叩かれた老人からはチェンバロみたいな音がしてきれい。
2010年12月22日(水) 2
友だちが犯人だっていうことに、たぶん私だけ気づいている。でもそれを誰かに伝えるべきなのかどうかがわかんない。
いくつかの学校は山の上にあるから大丈夫なようだった、でも街のほとんどは水没していて、私たちはかろうじて水面に突き出している屋根から屋根に板を渡してそこを移動している。銭湯の屋根の上で日没を眺める。背中のほうには都会があって、都会のビルはみんな無事だから、高くそびえて輝いている。
水中には短く不格好なヘビがいる。ジャンプして私たちに噛み付こうと必死なヘビだけれど、誰かの足に踏まれて粉々になる。
雨が降るけれど雨雲はない。晴天のまま別世界から雨だけ連れてきたみたいにパラパラと暖かい雨。
私は犯人の友だちと手をつないで歩く。保健室は血まみれだけれど、それも別世界の血みたいに、死体など見つからず、誰かのいたずらということになっていた。教室は板でたくさんの部屋というふうに仕切られて、それぞれにちゃんとした鍵がつけられている。私の部屋は一階だった。ときどき知らんおばちゃんが間違えて窓から入ってくる。外から来るひとはだいたいおみやげを持っていて、私は漫画をもらうことができ満足。
みんな、なんとなくで集合できる。5階には個人の部屋じゃない大教室があるので、そこでいまは花を育てている。
窓の外では雨が降っている。恋人どうしのふたりが踊ろうと言って窓の外にふわりと出る。ゆっくり落下しながら手をつないで踊っている。ふたりは水面でヘビに変わる。
2010年12月23日(木)
学生会館で友だちを待っていると、知らない女の子ふたり組に、オリンピックホールはどこですか、と訊かれる。たぶんあの階段をのぼって、まっすぐ行ったらつながっている棟のところ、と説明する。ふたりが行って、見えなくなったあたりで、あれ、オリンピックホール? となる。そんなホールやっぱり知らないのでインフォメーションカウンターに訊いて、あとからふたりを追いかけて伝えよう。カウンターまで行くとふたり組もそこに来ていた。見つかったら気まずいから、私は透明になって空中を漂いつ側に。ふたりが受けている説明を私も一緒にきく。私がふたりに行かせてしまったのはデパートとかホテルとか図書館のある棟で、ふたりの行きたいのは部室とか練習室のある棟。学生会館はこんなに広かったのか。見知ったほうの棟にもどって部室に行くと、天井からいっぱい、青いスパンコールできらきらの魚がぶら下がっている。
2010年12月25日(土)
新しい船が完成する。私たちの船には女しかいない。町は半分土砂に埋まり灰色、みんな救いを待っていた。でも船長の女の子が、女子小学生、女子中学生、女子高校生しか乗せません、と言ったので、私たちは町の人々から反感をかっている。甲板にはアスレチック公園があって、私たちは町の人々への嫌味なパフォーマンスみたいに、土の混じる雨の中、おおはしゃぎして見せる。船内には服屋などがあり、たいてい薄青く光っていてきれい。
町の男たちが無理にでも船に乗り込む計画をしているので、もう出発せねばならんね。
私たちの意思の伝達は言葉とキスで交わされる。
出発だね。
出発だよ。
2010年12月27日(月)
みんなでテレビゲームをしている。畳の部屋で、夏だ。網戸に蝉を並べている。テレビ画面の中では背中に羽をはやした主人公が一緒に冒険する仲間を捜している。背中の羽は指でつまめばとれて、画面から引き出せるので、みんなで頭に飾って遊ぶ。
2010年12月31日(金)
個性的な登場人物たちがさまざまな試練を乗り越えていく。