about map e! yumenikki  nikkihito) インデックスへ

2011年04月09日(土)

 友だちと手を振って別れる。友だちは団地のほうに歩いていって、私は小道に逸れた。小学生のときの通学路だったはずなのに、坂は急で、岩がむき出しだし歩きにくい。私の前を歩いていた中学生の集団はもうだいぶ先に行ってしまっている。道の脇ではキンモクセイがずいぶん育っている。
 歩道橋を渡って下の道に降りる、それで空き地の横をまっすぐいったら家につく、と思ってたけどそこにあったのは海だった。
 月がとても大きく見える。海に反射してふたつの月。それで夜なのにこんなに明るいのだった。真っ赤なお城みたいなゴミ焼却場のてっぺんが海面から突き出している。
 中学生たちはつぎつぎに海に飛び込んで行く。笑い声がきこえる。家は海の底のほうにあるらしい。ちゃんとみんな生きていけてるんだとほっとする。
 昔の友だちが成長した姿で海の写真を撮っていた。私に気づいてたくさんのお菓子をくれる。干した小魚を甘く味付けしたお菓子。


2011年04月10日(日) 1

 六角形のお風呂場で、お風呂は丸くとても浅い。お湯は青色で、重たい感じがする。肌がきれいになるけれど、ずっと浸かっていると健康によくないという。浴室近くの客室で知らない家族が大げんかをしていて、怖くなったのですぐに出た。女のひとの叫び声がきんきんと刺さるのだ。
 そして出た先は学校の渡り廊下。人工芝の上を裸足で歩く。そうだ、きょうは委員会の会議があった、もう時間だ。あわてて教室に向かう。白くて広い教室。それぞれの机には飴がいっぱい入った器が置いてある。
 それで、地震。
 飴が全部床に落ちて跳ね回った。私たちはみんな床に体育座りした。頭をふせて。でも見えていた、窓の外の景色ががくがくと揺れていた。
 揺れがおさまるとみんな外に走り出した。私と友だちの数人は床の飴を全部拾ってあげていた。大きな頭を被った細いひとが私たちを踏みにじりながら歩いていった。痛かった。友だちには痛くなかったと言った。さて私たちも避難しよう。
 外には氷山がたくさん突き出していて、さっきの大きな頭をかぶった人たちが、大きな頭にあわせた胴体の、巨大な怪物に変身して、必死にその山々を越えようとしていた。何匹も谷底に落ちて行ってた。私はいま教室が空っぽで、つまりお金の番をする人がいないんだって気づいて、回れ右した。


2011年04月10日(日) 2

 部屋に母とふたりでいる。父から電話があって、最近姉が夜出歩いているようで不安だと言う。サークル活動だよとか説明してるうちに、どんどん電話の声が遠くなって、私が不安になるよ。すると突然私の肩が叩かれる。ふりむくと姉がいる。姉の眼が変に白っぽくて、私と母ではやく病院に行きなさいと姉に言う。姉はさきに行ってるねと部屋を出る。私は部屋のすみで縮こまっていた犬たちのリードを壁からはずしてやる。
 駆け出した犬たちの後を追うと、昔すんでた家につく。


2011年04月12日(火)

 ツイッターのサブアカウントを作った。前からあるアカウントと同じく「あきこ」って名前にしておいた。まだだれもフォローしてないしされてない状態で、別の「あきこ」さんという人から「はわわ☆ 同じ名前ですね☆ なんでツイッターを始めましたか? 私は私の心のたけにあうことばは、この数だなって思いました^^」ってリプライ。同じ名前とか言われたら名前かえにくくなるじゃんって思いながらも名前とアカウント名をかえた。


2011年04月13日(水)

 友だちといっしょに登校したけど学校には誰もいなかった。廃墟みたいでさびしかった。教室の机とか棚に土を詰めて、校庭のスミレを移植した。


2011年04月14日(土)

 戦争をしているけど敵のことはよく知らない。決まりを守って生活しないと私たちすぐに死んでしまう。螺旋階段を降りて、地下には音楽ホールがある。座席には番号の書かれた紙が置いてあり、くじ引きを引いて出た番号のところで眠る。舞台には白い箱がたくさん並んでいる。毎朝白い箱を地上に運搬し、並べ、夕方には地下に戻す。ときどき襲撃にあう。穴の開いた箱は近くの大きな河に沈める。仲間が死んだときは箱を開けて、その子の死なない設定の世界から、まだ生きてるその子を取り出す。くたくたした布製の人形が取り出され、だんだん人間になるのだ。さみしくなったひとが、別の世界から別の自分を連れてきたりもする。連れてくることによって、もっと戦争の激しい世界の自分を助けたげたりもする。箱から全然知らない人間が出てくることもまれにある。
 例えばこの、絵のじょうずな子ども。
 子どもが来てから白い箱の数個がカラフルになった。もとの世界にいたら有名な画家になれたろうにとみんな嘆いた。子どもはトランペットを吹くのも得意だった。みんなの白い服もすぐに色付きになった。私はワンピースに大きな魚を描いてもらった。
 ある晩、外が光ってると見張りの子が言って、それは早い朝ではないのか! 箱を出さなければ! あわてて階段に列をつくって、バケツリレー形式で箱を地上に並べていく。外で並べる係の子が、でもやっぱり夜だ! 月が大きいもの! と言う。みんな箱を足下に置いて、ぞろぞろと外に出た。河は黒い道路になっていて、川下から未来が、川上から過去が来ていると、父によって説明される。川下だったほうからは大きなカタツムリがゆっくりと歩いて来ていた。川上からは鉄の体の馬たちが来る。空では月がさんさんと光っていて、私たちみんな光に手をのばした。光の正体は蛾の群れだった。手についた粉をはらって、明るい夜の街に向かった。