2012年10月18日(木)
椎名林檎を大音量でききながら電車に乗っている。ぷつっと音がして音楽が途切れたと思ったらiPodの充電が切れていた。バッテリーアイコンのある位置に、逆さになった小さい金魚の絵が映っている。暇になって車内を見渡す。座席は埋まっているけど立ってるひとはいない。隣に座るひとは本に赤ペンでなにか必死に書き込んでいるので受験生かなと予想する。本を覗きこむと小説で、赤ペンではひたすら登場人物の名前が書き換えられていて、びっくりした。
2012年10月19日(金)
長い非常階段をおりて、町の工場の倉庫へ給食を食べに行く。木くずのたくさん落ちているその倉庫には、机も椅子も中途半端に並べられている。人数分ちゃんとそろえたころに配膳係が給食を持って現れる。配膳係は頭から白い布をかぶった人びとで、生徒ではない。彼らは机に給食を並べ終わると倉庫から出ていく。私たちは好きな席に座る。おしゃべりしながら食べる。隣の席の友だちの、縁が黒くてレンズが蛍光緑の眼鏡がかっこいい。かけさせてもらったけど、別に周りが緑に見えたりはしなかった。食べ終わった子から楽器を吹いた。自分の楽器があたたまると、演奏しつつ、倉庫の中にあるまた小さい倉庫に入り、そこにある階段から二階にのぼる。二階からは屋根に行けるらしい。私はなかなか給食を食べ終わらなかった。みんな行進するみたいに二階に続く倉庫に入っていく。その様子をぼうっとして見ていた。
2012年10月20日(土)
久々にバイト先の映画館に行くと、そこは様変わりしている。赤いテントの屋根、大きくなったスクリーン。たぶんデジタル上映。映写室がぐっと小さくなっている。
入場するとケータイが勝手に映画館のサイトにアクセスしていて、会員登録をして見たい映画を選ぶ。選んだ映画が選んだひとの目に映るらしい。好きな二本立てを作るために悩んでいると、知らない社員さんがいらいらした様子でステージに立ち、予定時刻を20分過ぎているが映画を決めてない客がいるから始められない、というようなことを言う。仕様がないので、決められないまま「決定」に進むと、周りのお客はスクリーンに集中しだす。私のスクリーンには白い光が映写されるばかりだった。
上映が終わるとそこは野外の劇場になっている。おばちゃんたちが、二本目って続けて見るものなのかねえ、出てもう一回お金払ったほうがいいのかねえ。と話しているので、そのままお席にどうぞとスタッフみたいな声で私が言う。いや、私もスタッフだ。エプロンをしている。
木製の丸い椅子の間を駆け抜けてスタッフ・ルームに行く。新しいマニュアルを渡される。3ページ目までは落書きで埋まっていて、笑ってしまった。姉や友だちも準備万端のようだった。次の上映が始まる。映写室の窓からは、映画を選んでないのに映像が見えた 。
鏡を見ると妙に頭が気になる。前髪の分け目が変だ。今日はウィッグかなと思って額をなぞると血が指につく。髪が変なのでなくて、頭が割れているのだ。割れて、腫れて、赤いハートみたいになった顔を見つめる。異常気象のせいだった。海はすでに凍り始めていた。鳥もだ。飛ぶ鳥は真っ白になって、海だった氷の表面につぎつぎ墜落する。温かい海も端からやられていく。アシカたちが猛スピードで逃げるがすぐ追いつかれる。氷の上で震えるペンギンたちは団子のまま動かなくなる。なにか教訓的なナレーションが流れたけれど聞き取れなかった。
END合図のテープが流れて、慌ててフィルムの回転を止める。デジタルでなかったのか、ここのデジタル上映はフィルムの質に近いよう作られているという噂ははずれで、単なるフィルム上映だったらしい。お客の誘導を終えるとポスターを張り替えたりの作業が待っている。私は映写ノートを確認する。今日も映写事故はない、上映の遅れもなかった。いつものようにバイト先のビルを出る。
学校に行く。
音楽室に向かう。たくさんのノートが散らばっている。バイト先にあったマニュアルも含まれている。でもこんな映写方法、本当は、しない。木でできた表紙のノートを見つける。そういうつくりノートがいくつもある。呪いを防ぐためのファイルだと教えられる。持ち上げると気味の悪い絵の描かれたやわらかい紙がいくつも落ちてきた。あわててノートにはさみ直す。
窓から四人、入ってくる。私たちの敵である。物干し竿や針金で攻撃してくる彼らに対して、超能力で立ち向かう。どうやら戦闘は最初のほうだけで、あとはストーリーが勝手に進行する。過去編に入ると少年時代の主人公たちと、また私たちが倒してあげなければならない敵が出てくる。だけどそれは倒せることが決まっているから心配いらない。そこまで来ると、やっと恋愛モードが始まる。好きなルートを選ぶ。乙女ゲーってたいへんだなあと思う。
2012年10月22日(月)
ゆるいバトルロワイヤル的な。
メモ:町の封鎖、半分のひとが体育館に集められる、体育館での武器と腕時計の支給、館内放送と町内放送で違う内容のアナウンス(おおむね体育館にいたため外での放送内容はわからない)、体育館のひとは町の各所に転送される、腕時計ありが腕時計ありを殺すと加点・腕時計なしを殺すと減点、腕時計あり同士でチームを宣言するとその時点からの各人への加点・減点はチームの人数で割ったぶんだけ行われる、腕時計なしのひととチームを組むとチーム認定はされるけど分配は行われない・チームの腕時計なしがよその腕時計ありを殺すとチームの腕時計ありへの加点になる。書店員は死なない。