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2012年10月01日(月)

 欲しい漫画があるので古本屋に行く。古本屋は大きくて、灰色。団地のように見える。ジャンプ漫画はあの部分の1階から8階だと教えてもらう。
 近づくと緑の床と白い天井のある森だった。しっとりとした素材の床はたくさん黒いシミができていた。雨漏りのあとが白く浮いていた。奥に進むと回転寿司のレーンがある。いろんなタイプのマグロが回るレーンらしい。でもお客は数人のサラリーマンがいるばかりで、レーンは動く力もないらしく、サラリーマンがまわりを回ってまばらな皿を回収していた。苦笑いの掃除のおばちゃんと目があって、あわてて逸らした。昔は違ったんだと言われて、苦しかった。


2012年10月03日(水)

 教室の一番後ろの席はピアノになっている。鍵盤のひとつが企業の広告入りの青いプラスチックになっているのは無料修理を頼んだせいだ。そこだけ鍵盤が軽くて弾きづらい。体育の授業のために、子どもの私たちみんな、校庭に向かう。
 子供たちが去ったのを確認し、大学生の私がこっそり教室に入る。ヘッドホンをして鍵盤に触る。ピアノの上には今まで弾いてきた曲の楽譜が置いてある。発表会の曲もあるし、合唱の伴奏もある。どの楽譜を見ても、どんな曲か思い出せなかった。いつ弾いたかはわかるのに。
「別れの曲」の最初だけ指が覚えてて、楽譜を見ずに、同じ小節を何度も弾いた。


2012年10月05日(金)

 フェンスを乗り越えた先にはたくさんのプールが広がっている。夜だ。それぞれのプールが月明かりを反射して、ぼんやり光っている。プールサイドは赤い。田んぼの畦道みたいに伸びている。みんなプールに入ろうとするけど、みんなはプールに入るとたぶん溶けてしまう。もう冬だから服を着てても泳ぐのは寒いよと呼びかけて(もちろん、みんなが溶けてしまうのを防ぐためだ。みんなは自分たちが溶けてしまうことをわかってない)、いちばん小さいプールにシャボン玉の液を投下。バドミントンのラケットのガットを全部はずしたやつで、大きいシャボン玉を作って見せる。みんなシャボン玉に夢中だ。制服のリボンをほどいて輪っかにして使ったりして。


2012年10月08日(月) 1

 廊下は水浸しだった。天井のシャワーからはずっと水が流れている。壁には銀色のボタンがたくさん並んでいる。私たちは正しい順番でボタンを押さなくてはならない。少ない折り畳み傘を何人かずつで共有して、校内放送をじっと聞きながら教室にいる。給食の食器が黴ている。配膳台の上には大昔のスパゲッティ・ナポリタンの入った、古い寸胴だけがのっている。寸胴の中は水でたぷたぷだ。ナポリタンは魚みたいに切れ切れになって浮いている。攻撃を命じられた班の子どもはそれを水鉄砲につめる。他の教室は窓に鉄格子をはめられている。
 私が隣の隣の教室の前にあるボタンを押しているとき、その背後の窓、鉄格子の隙間からはたくさんの白い手が伸びていた。すぐに別の私になってその様子を見ながら、ホラー映画みたいだと思った。ボタンを押していた子どもの傘はみるみる溶けてしまう。
 教室があるのとは反対の壁にある窓、ボタンたちの上に並ぶ窓をのぞくと、雨でけぶった景色がある。楽器の音がしている。外では吹奏楽部が応援のために演奏しているのだ。雨がうるさくて切れ切れだけど。ああ私はもう吹奏楽をしてないって思って、ちょっと悲しい。


2012年10月08日(月) 2

 一仕事終えて三人で暗いスロープを歩いている。ひとりが携帯電話を光らせながら、約束があるからもう行くね、と言う。私ともうひとりは、じゃあふたりでラーメン行くか、となるけど、正直めんどくさい。やっぱり学食で食べるねごめんね、とひとりで道を戻る。真っ暗だ。